最近まで人生は50年でした。古くは信長の人生わずか50年下天のうちをくらぶれば夢幻の如くなりがよく知られていますが、時代をかなり下った戦前でさへ寿命は延びていなかったようです。内田百閒が「人生50年まだあと5,6年あると思うとくさくさする。」とひねくれたことを言っています。ところが現在の平均寿命は男女ともに80歳を超えました。長寿という夢を現代人は実現できたようです。しかし、その引き換えに認知症にかかるようになりました。

 昔から年を取ると認知症を発症する人がいることは知られていました。人生50年のころはそれほど問題にならなかったのですが、それでも、こんな病気があることは知られていて、ガリバー旅行記の中に認知症が出てきます。皆さんご存じですか?彼が行ったのは小人国、巨人国だけでなく、天空の国ラピュタに飛び、最後はナンガサキから帰国するというのもあるのです。スイフト氏は当時の人間社会に幻滅し、人間そのものを否定的にとらえていたようです。その中で長寿にあこがれる人間を徹底的に皮肉っています。今も昔も人間があこがれるのは不老不死、その不老不死の人間が生まれてくることをラピュタに続いて訪れたラグナグの訪問で彼は知るのです。なんてすばらしい、ガリバーは驚嘆するのですが、現地の人から事実を教えられて沈黙してしまうのです。この不老不死の人たちはただ死なないだけで老化は普通の人と同様にするのです。おまけに老年痴呆を起こす確率が極めて高い、だからラグナグの社会では忌み嫌われているというのです。今から300年前の小説ですが、まさに現代を予言しているようです。


 では、なぜ認知症になるのでしょう。これまでの通説では年を取って家に引きこもり何もしなくなった不活発な人が認知症になる。そう思われていましたが、これは違うようです。私の母は長年短歌の会を中心に地域活動に活発に参加していましたが、認知症にかかってしまいました。ほかにも脳トレにより発症を予防できる、これもそれほど証拠はないようです。それなら何が認知症を起こすのかというと年を取るからなのです、高齢になるのが一番の危険因子です。どうやら、これは脳の病気らしい。脳の中にアミロイドβという異常な蛋白が沈着して脳を壊してしまうというのがこの病気の原因だと判ってきました。アミロイドは我々の体で作られているのですが、正常な状態では水に溶けて体外に排出されます。ところが、老化により遺伝子変異が起きてしまい、アミロイドが、水に溶けないアミロイドβ変わりそれが脳から排出されなくなるため脳に沈着してしまう。そして脳が死滅するというメカニズムのようです。自分で作りだしたごみで自分自身が窒息してしまうということのようです。


 いったん、認知症が始まると悲しいことがいっぱい起きてきます。大事なものは無くさないように気をつけてしまいこむのでかえってなくなってしまいます。火の始末ができません。物がどこへ行ったか分からなくなるので身近の人が取ったと疑いだします。それと徘徊が始まります。家族がどんなに注意していても一瞬の隙で家から出て行ってしまいます。
昔は大家族でしたから協力しあって何とか耐えてきました。しかし、今は配偶者、同居しない息子や娘その配偶者ぐらいしかケアする人がいません。だから、一番、認知症のケアに重要なことは家族だけで見ないことなのです。公的な援助を積極的に使いましょう。近所の批判や非難は気にしないことです。どうせ助けてはくれないのですから。これから認知症の人たちの対処について自分自身の経験も含めて書いてみるつもりです。